俺の師匠の教えの一つに「種銭の一割に当たる金額が獲得出来たら、その博打場から一時的にでも構わないから外出して頭をリセットした方が良い」というものがある。残念ながらその言葉は頭の隅に置かれただけで、師匠の存命中は勿論、お隠れに成った後もそれを実行する事は無く現在に至る。
そんな俺でもin、outの収支だけはきちんと付ける習慣がついている。勝った時の収支を付けるのは苦に成らないのだが、負けの収支を付けていると惨めな気持ちに成ってしまう時も有り、何度も挫折しかけているのも事実だ。しかし、辛くてもきちんと記録する事により、過去を顧みて反省・改善することが出来るので頑張って記録を付けている。その記録によると、既に今月の収支はかなりの乱高下をしてしまっている。
11月1日、A店にて300ドルを入金し、バカラ勝負で一時残高が40ドルまで下がり、奇跡の復活にて最終残高660ドルで終了。トータル滞在時間は2時間。内容は、序盤から細かく張って居たがズルズル落とされる展開が続いていた。最後は自暴自棄に成り、残高80ドルをプレーヤーに全額投入。偶々当たり、増えた残高を懲りずにプレーヤーにオールイン。これが功を奏し、プラス域まで這い上がる。その後は、流石にオールインは怖くなり、最初と同様に細かく張った。最終的には入金額と同額以上の勝利を収めることができた。この日はそのまま帰宅して食事はせずに睡眠を摂る。
翌日は早朝に覚醒し、朝風呂に入り身を清め出勤。後半調子の良かった同じ店にターゲットを絞る。入金額は控えめに2万円、ゲームは昨日助けられたバカラをプレーすることにした。
本来、流れが見えるまでは見をしたいところだが、強制退場させられるので仕方なく張る。少しでも勝率を高めるために、セオリー通りにバンカーに5ドルベットする。結果はプレーヤーの勝利だが、気持ち的には今のところダメージは無い。昨日の勝利金もあり、負け額も少ないので、まだまだ余裕がある。
だが、今回はその余裕が裏目にでてしまった。次のゲームも、その次のゲームもバンカーに張ったのだが、プレーヤーにツラが落ちていく。負けのリカバリーのために徐々にベット額も上げていくのだがうまく噛み合わない。さすがに3連続で予想を外してしまい、冷静さを失いつつあるのだろうか。顔が火照ってきたのが判る。そして俺はその日最大のミスを犯す。冷静になれと自分に言い聞かせながら、バンカーに100ドル置いてしまったのだ。確定ボタンを押してしまったらランドカジノとは違い、ディーラーのノーモアベットの声がかかる前でも訂正は出来ない。
後戻りが出来ないと判っていて安易に確定ボタンを押してしまった俺がいる。
ディーラーが配ったカードだが、プレーヤーの一枚目は9 バンカーは10。プレーヤーの2枚目は10でナチュラル9の完成だ。まだ勝負は判らないと言いたいが、今日の流れは駄目だ。バンカーの2枚目は案の定9には届かない。これで総額135ドルのストレート負け。これ以上の勝負は勝てる気がしなく成ったので潔く退店する事にした。
店を出てサウナに直行。悪い気を汗と共に流してしまいたい。高温サウナに入りたっぷり汗を流す。気休めだが運気を高めるためにレストランにて、かつ丼を注文。サウナ代と食事の合計で7,000円の出費だ。勝負の負け額と合わせると合計2万円以上の支払いになるが、収支は(かろうじて)プラス領域なので気にしてはいけない。
そして懲りずに3日目も出勤だ。昨日毟り取られたバカラは避け、スロットからスタートする。1スピン2ドルに設定して、熱狂ロトの自動スピンを設定して、早々にトイレに駆け込む。トイレから出て画面を見ると、残高はストレートに落ちていて100ドルのマイナスに。ここはやはりバカラか・・。
これ以上の負けは生活に支障がでてしまう。もう駄目だ、賭博はしばらく禁止だ。ギャンブル中毒者特有の言い訳を自分に聞かせ、俺は店を後にした。
この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。
参考 カジノカフェ(インカジ)摘発・逮捕の情報と見解