佐藤純の賭博回遊業 賭博と酒

さて今日は、知り合いの友人さんの店に誘われて、少しだけお邪魔させてもらった。

新宿のオフィス街に溶け込み、こぢんまりと佇んでいるそれは、小さな店ながらセンスも良い。

薄暗い店内、アンティークの照明に照らされて琥珀色に反射したメインカウンターには、常連なのだろうか…様々な業界のあらゆる職種の精鋭たちが集まって賑やかに話をしていた。

俺もその穏やかな喧騒に混じり少し話をさせてもらったが、男性向けの男娼斡旋業だというご老人に「君、稼げるよ!」と誘われたのには笑った。かなりのやり手で、引退したAV女優も束ねているとのことだ。

「一晩で100万稼げるよ!」

屈託なく言うその顔が逆に怖い。最終的には皆ニューハーフになるんだとか、大抵のことは飲み込んでくれるこの街の包容力に居心地の良さを感じながら、しばらく彼の話を聞き、丁重に、慎重にお断りをして俺はその場を離れた。

他にも何人かと酒を酌み交わし、とても刺激を与えて貰った。これからも事有る毎にお邪魔するだろう。

店は平日の昼間も開けていて、なんと100円でカレーを提供しているらしい。その価格にもビックリだが、完全に赤字での提供と聞いて、流石に商売なのに大丈夫かと心配に成ってしまった。

気持ち良く、アルコールが体を散歩し始めた所で本題に入る。

店を出たのは、深夜0時に成りかかっている所だった。場所は新宿。酒も入ってる。

終電に間に合うかの瀬戸際、この状況で俺が目指す所は当然駅のホーム…ではなく、インカジに決まっているのだね。後で思うのだがこれがいけなかった。

佐藤純

両足は自動的に行きつけの店に向かう。何の迷いもなくこの日も俺はするりと吸い込まれてしまった。

勝手知ったる主戦場、違うことといえばちょっとアルコールが入っている事か。俺はさっさと入店手続きを終え、70000円のデポジットを完了させる。最初に開いたのはライブバカラ。様子見からスタートし、バンカーの面を狙う。焦りは禁物…画面を眺めながらじっくりと待つ。

粘った甲斐がありプレーヤー2目、バンカー1目の後、1目プレイヤーを挟んで、バンカーの面が始まったようだ。バンカーが3目続いた次の手で、俺は50ドルをバンカーにファーストベットした。

プレーヤーに配られた1枚目のカードは「9」…対してバンカーのそれは「3」。

嫌な予感がしてきた。…だがバカラは2枚のカードの数字の合計で勝負するのだから、まだ勝負はわからない。まだ諦めるなと己に言い聞かせて進行を見守る。思わず自分が飲み込む唾の音が耳に響く。

プレーヤーの2枚目は「A」!これでプレーヤーの数字は合計10つまり0になる。

バンカーに配られたのは「6」。合計で9、文句なしでバンカーの勝利だ。

勢いに乗って俺はさらに50ドルでバンカーを追うことにした。これがハウスなら絞りが出来るので、一心に念じながら絞っていたことだろう。オンラインカジノでは客同士の連帯感が味わえないのが残念だが、煩い客やマナーを守れない客と打つことを考えると、これもまた一つの選択肢だ。インカジでは他の席で負けて駄々をこねる困った奴もたまにはいるがね。

さてゲームに戻る。面狙いでバンカー勝負をしているが、これがまぁ切れない。ついに三列目に突入してしまった。通常の手書き罫線ならとっくにL字型罫線に成っている。俺の大好物だ。なんせ何も考えずにバンカーに金を置く作業だけを遂行すればいいのだからな。だが始まりがあれば当然終りもある。フラットベッドだから最後に一度だけ搾取されてしまうが、14目も当たれば一度くらい外れても何の問題もない。バカラを遊戯する際、負けを意識してしまうと必然的にベット額が下がってしまう。行ける場面では怖がらずに押すことが、勝利を手にするためにはどうしても必要になってくるのだ。

しかし心理というものは面白いもので、上記を理解していても余裕が無いと強気で行けない。故に資金がない時は、博打を打つなと先輩に何回も言われた過去がある。俺はその教えを忠実に守りきれず、負けた事が何度あることやら…。

面は終わり、これで引き出し処理をすれば勝利確定だ。だがそこにはやめられない俺が居た。

欲を出しすぎた。

罫線がめちゃくちゃに成り、躍起になって熱くなり、回らない頭で予想をしても全く当たらなくなってしまった。先程の勝利金はあっと言う間に消えて元金も削られる展開に成ってしまった。回っているのはアルコールか。喉の渇きを自覚しサービスのウーロン茶を注文する。テンコで来たと思うと面に成り、面を追うとテンコに…瞬く間に入金額はなくなり、資金ショートした。

博打を打つ際はアルコールは厳禁と判っていても、このザマに成ってしまうのはアルコールの魔力だろうか?兎に角酔っている時は判断がブレるので危険この上ない。

飲んだら乗るな、乗るなら飲むなと俺の大嫌いな組織が標語として出しているが、俺は言いたい。

飲んだら打つな、打つなら飲むな呑まれるぞ。

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この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。

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