佐藤純の賭博回遊業 歌舞伎町に貯金。奇跡は起きなく

新宿にある、かかりつけ医を受診したのだが、予定より早く診察が終わってしまった。余裕が出来たので、これは歌舞伎町に行かねば成らないだろう。自宅に向かう電車とは逆の電車に飛び乗り、いざ歌舞伎町へ。

佐藤純

電車を降りてから徒歩で移動を開始する。ほどなくして行き付けの店に到着したのだが、珍しくシャッターが下りて居るではないか!24時間年中無休営業のはずだが、一体何故だ?一瞬思考をめぐらせたが、直ぐにピンと来た。“手入れ”が入ったのだ。

その時に居合わせ無くて本当に良かった。間違いなく不味い状況になっていただろうし、十中八九ただでは済まなかっただろうと安易に予想がつく。

数秒頭が固まったが、「とりあえず難を逃れたのだから俺はついている」と考えを転換し、近場の別店に移動をすることにした。最近めっきり勝たせてもらえなくなった店に行くのは少々気が引けるのだが、多少のネガティブ要素には眼を瞑るしかあるまい。店にゲームサーバーがある事は無いし、店ごとに設定を変更出来る仕様では無いのだから、何処で打っても同じだろうと気持ちを切り替える。

受付を済ませ、1000ドルを入金。最初の勝負に決めたのはライブバカラだ。ソフトを立ち上げて参加できるタイミングでプレーヤーに100ドル投入。一枚目は『A』。対するバンカーには『10』が来た。

「これがブラックジャックなら最高の組み合わせだったのに・・・」

そんな俺の心の声に応えるかのように、プレーヤーの2枚目に『10』が配れる。

「だからブラックジャックじゃ無いのだから!」思わず声が出そうになるのを何とか飲み込み、勝負の行方を見守っていたのだが、バンカーに来たのは無慈悲の『9』。ナチュラル9の完成で敗北が決まった。一瞬の勝負で100ドルが溶けた瞬間である。

さて、どうやって残高を原点に戻すべきか…。思考を巡らせたが、残高以上に気になることがあった。本来行くはずだったあの店のことだ。今いる場所から距離はそう離れてはいないし、恐らくその手の情報は間違いなくこの店にも回ってきているだろう。そんな予測を立て、店員と話をするために適当なスロットフリースピンを設定し、席を立った。

「お宅の店に来る前にちょいと通りすぎた店が、閉めていたけど捕まったの?」

「遣られたみたいですね~。」

「やっぱりね。少しの間、店閉じなくても平気なの?」

「店閉じても結局、摘発される場合はされますので、、」

いつやられるか分からない業界だからこそ、開き直ってしまおうという考えのようだ。これくらい肝が据わっていないと、この業界で生き残ってはいけないのだろう。雑談は他にも有ったが、公開するようなものでも無いので割愛させてもらう。

話を終えて席に戻ったのだが、『○○回転終了しました』のテロップが空しく表示されている。残高も700ドルに少し毛が生えた程度まで下がっていた。

ここからのリカバリーは難しいと判断し、ブラックジャックに移動をする。先ほどのバカラのカード配分を思い出し、もしかしたら『21』が狙えるかもしれないという、オカルト思考にとらわれてしまったのだ。マイナス300ドルを一気にひっくり返すには一撃を狙うしかない。300ドルをボックスに突っ込み、勝負を開始。

配られたカードは『2』と『10』。俺の最低なカードに対して、ディーラーのオープンカードは『10』だった。このまま勝負しても勝ち目は無いのでヒットをするも、配られたのは『10』でバースト。いきなり傷を広げてしまった!

「ここはもう止めておけ」最後の良心がそういっているのだが、

「残高ALLインである程度リカバリーできるぞ」という悪魔の誘惑にのってしまう俺は大馬鹿者だ。

勝負の結果はご想像通り、ディーラーの勝利でキャッシャーには0の文字。何でコウナルノカネ、、、金返せ!心で叫び退店を余儀なくされた瞬間である。

元々勝率が高い店では無いが、やはり博打事にも相性があるのだろうと考えずには居られない出来事で有った。

この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。

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