佐藤純の賭博回遊業 未来を手にした男(前編)

始めに断っておくが、今回の話の主役は俺ではない。過去に知り合いに起きた奇跡の一部始終を報告させてもらう。

この物語の主人公である知人のプロフィールから紹介しよう。

職業:運送会社のドライバー

年齢:33歳

趣味:博打なら何でも挑戦する博打愛好家(博打狂?)

資産:-600万円程(本人申告)

性別:男(彼は否定しているが、恐らくゲイだ。間違いない!)

ざっとこんな感じの男だ。彼とは仕事で何度か一緒に成り、博打繋がりで仲良くなった。(仲良くとは友人としてという意味だ。決して変な意味ではない!)

最初は手近にあるパチンコの乗り打ちからはじめ、程なくして競馬にも行くようになり、夏はナイター競馬、さらには競艇にも一緒に行くようになった。の乗り打ちだけをしていれば、そんなに大きく負けることはないのだが、当時の彼は、ギャンブル界の経済を回さんとばかりに湯水のように金を投入していた。

そんな生活が数ヶ月経った頃、俺が通っている(六本の木)にあるアングラカジノに彼を招待することにした。店が紹介チップキャンペーンを始めたので俺にも旨みがある。

「今度の休みに変わった博打場に連れて行くので、20万円用意しておいて」

「何処??」

にやけて頷いている。いい感じで乗ってきているようだ。

約束の日に赤坂で待ち合わせをし、近場のレストランで遅い昼食を取り、行き先を暴露した。彼にとってアングラは初潜入なので気持ちが落ち着かないのだろうか。

「捕まらないか、もしも、逮捕されたら、会社首だろうな?運が悪けりゃ、今日捕まるよな?現行犯だと逃げられないし・・・・」

とても不安げな表情で質問をしてきた。これから勝負すると言うときにこの様な事を質問されると俺の気持ちまで落ち込んでしまう。

「辞めよう!色々心配するのは理解できるが、余りにも心配しすぎて行っても楽しめないだろうからね!」

そう言って、彼の質問を遮った。俺の言葉で安心したのか「行く!」と一言が返ってきた。それからは、一切ネガティブな事は言わなくなった。博打狂の彼にとってアングラカジノという未知のエリアは、禁断の果実のように魅力的に見えたのだろう。

彼の気持ちが変わらないうちに早々に現場に行く事にした。歩いていけない距離ではないが、話をぶり返されるのは御免なので、タクシーを停めて向かう。車の中で所持金を確認したところ、提案した金額の10倍の200万円を持ってきているようだ。公営レースでの借金が膨れて600万円の負債があったはずなのに、そんな状況下で200万円を用意してきたことに戦慄したが、それだけ本気なんだろうと結論を出す。

とりあえず200万円全てをチップに変えるなんて馬鹿な真似はしないよう、まずは10万円分程度のチップに抑えておくように指示をする。サービスチップが2万円分もついてくるし、無茶をするところではないのだ。

(余談だが、海外のランドカジノでは、コンプとして周辺や、カジノホテルで使えるサービス券などを貰えるが、アングラでは当然その様なサービスは存在しない。基本的にはサービスチップの提供と言う形でサービスを提供している。)

車を降りて、外国人の黒服に声を掛けて店に同行させる。店の前に到着後、案内してくれた黒服が携帯をとりだした。どうやら俺たちに過去の入場経験があるかを調べているようだ。まもなく出てきたマネージャーに連れを紹介する。初回の入場時には、身分証明書の提示と誓約書の記入をする必要があるため、彼が作業をしている間に一服して暇を潰す。

現在オープンしている卓は『ミニバカラ』と『ミディー』らしい。メンバー登録が完了した彼と共に、ひとまずミニバカラ卓を選択し、案内のバニーちゃんと卓に向かった。

佐藤純

この卓は丁度1シューが終わったらしく、カードシャッフルしている。次の準備が出来るまでに黒服を呼んでチップを購入する。シャッフルが終わり、いよいよゲームスタートだ。最初のゲームはオープンゲームとして、通常はベットが出来ないのだが、知人はそれを知らないので早々に賭けを始めようとしていた。静止したところで、思わぬ黒服のフォローが入る。

「構わないですよ、初めてですよね?記念に賭けてもしも当たったら、そのカードを記念に差し上げます。通常1倍ですが、今回のゲームだけは特別ルール作り3倍にします!!もちろん同席した皆様に、今回のみ同じルールを適用しますよ~」

と甘い誘い文句。海外のランドカジノでは絶対にありえない破格の出血大サービスだ。乗らない手は無いだろうが、オープンゲームに大金は払えない。俺はプレーヤーに10ドルのみを置いた。

知人の様子を伺っていると、躊躇せずにプレーヤーに100ドルチップをなんと3枚。TIEにまで50ドルを置いてやがる!・・・壊れている。完全に狂っているとしか言いようが無い。他のプレーヤーもそれなりにベットはしていたが、高くて30ドル止まりだった。(普通は流すオープンゲームなのだから、当然なのだ。)

ディーラーが笑顔でノーモアベットの掛け声を掛けた。後戻りは出来なくなった。プレーヤーとバンカーにカードをディール。最高額のベットをしている知人にプレーヤー側の2枚のカードが渡された。知人はそのカードをめくり上げ、重ねているカードを徐々に上にずらし、プレーヤーの合計数字を確認している。ため息からの笑顔、そしてそのまま伏せられたカードをディーラーに返却。一連の表情で落とされて上がったとは察しが付いた。

まずはバンカーのカードをオープンするのだが、結構じらしてくれる。じっくり絞った結果、バンカーには『2』と『6』のナチュラル8が完成だ。その場にいた人間が知人の敗北確信した瞬間、知人の笑顔は最高潮になる。誰もがプレーヤーはナチュラル9かと思いきや、プレーヤーに出来たのは何と『K』と『8』のナチュラル8。つまりTIEの完成で、8倍の払い戻しが確定だ。

「約束ですから、3倍増しでつけさせてもらいます」

営業用スマイルを貼り付けて、落ち着いた雰囲気を纏わせてたディーラーだが、少し手が震えているように見えた。50ドルが1250ドルに化けたのだ。俺も流石に驚いたね。

約束どおりのチップと共に、店の印鑑と鋏でカット加工されたカードが知人に返却される。どうやらカードは記念品のようだ。

「こんなサービス即興で思いつきましたが、二度と出来ませんね」

そう笑いながら黒服はバックヤードに消えていった。

この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。

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